Q.株式会社YMFG ZONEプラニング様の事業内容、松本様が担当をされている業務内容を教えてくだい。
株式会社YMFG ZONEプラニングは自治体の受託、地方創生のためのコンサルティング事業を中心に行っています。また私の部署では、地方でのスタートアップ支援、企業向けの新規事業開発の支援、さらには山口フィナンシャルグループでの新規事業企画を行っています。
私が現在の部署に着任し、スタートアップ創出事業を担当するようになったのは約4年前からです。中国経済産業局様と山口県下におけるスタートアップ支援の施策を考えている中、経洗塾を紹介していただきました。当時の山口県は中国地方の中でもスタートアップ支援がほとんどされておらず、”空白の地域”でした。
Q.今年で山口レボリューショナリーズは4年目、ミライベンチャーは2年目となりました。プログラム開始当初での山口県下のスタートアップ支援の状況はどのようなものでしたか?
当時も飲食店などスモールビジネスへの支援は行われていましたが、スタートアップへの支援は皆無であり、支援ができるアクセラレーターすらもいませんでした。このような状況であったため、まず初年度はスタートアップの認識を山口県下で徐々に根付かせるところから開始しました。初年度は「アクセラレーションプログラム」と「地域におけるアクセラレーター育成プログラム」を同時開催し、地域全体でスタートアップに対する認識をなんとか向上させようと考えました。まず1日目にアクセラレーターに向けての講義を実施し、そのノウハウをすぐに生かすことができるよう、2日目に起業家も含めた”山口レボリューショナリーズ”を実施するなど、開催方法も工夫をしました。
Q.経洗塾との連携でどのような成果がありましたか?
様々な功績はあるのですが、中でも大きかったのはスタートアップを目指される方々の「顔」が見えてきたことですね。もちろんプログラム開始前までにも個々で活動をされており、成果を出している方はたくさんいらっしゃいます。しかし支援側との接点はなかなか作ることができず、同じ場に会することは、ほとんどありませんでした。
しかしプログラムを実際に開催し、スタートアップを志される方が一同に会することでようやく、どのような支援を求められているのか、またどういった支援策が有効なのか明確になりました。そういった成果がある中で、大きな課題も浮き彫りになっています。その中の一つにプログラム修了後、参加者の事業がスケールをする際の支援体制が十分でないことが挙げられます。弊社のような金融機関の投資・融資といったサポートが十分ではなく、”本当のアクセラレーション”がまだまだ達成できていません。
Q.ファイナンス面からの支援ではどのようなことが必要になると考えますか?
地方でのファイナンス支援が磐石ではないため、調達を考える事業ステージになると大都市圏のVCに相談をするしか現状での解決策はありません。ファイナンス面での支援を拡充することができていないために、プログラム終了後に「資金面での支援をしてほしい」といった声を参加者からいただくことが多々あります。
弊社のような金融機関が特性を最大限に活かし、地方発スタートアップが調達フェーズに入った際にスムーズに資金調達を実施することができる仕組みを構築しなければいけません。地方でもスタートアップがスケールすることを可能にする”エコシステム”の構築が急務であると考えています。そのためには支援拠点と支援者を双方ともに完備し、ファイナンス面での支援を拡充する必要があります。拠点の役割としては、スタートアップ文化の気運醸成、つまりスタートアップを志される方々とタッチポイントを持つことができる場として機能をすることができれば良いと考えています。そしてそのような方の目標を実現することができるように、アクセラレーターが伴走をすることができる体制を確立したいですね。現在拠点としては、宇部市にて、うべスタートアップを運営しています。そこを中心に山口県下全域でスタートアップの支援拠点の展開を計画しています。
一方で参加者から「スタートアップを始めたくても何をすればいいかわからなかったが、地元山口で身近にスタートアップについて勉強をすることでき、事業構築を支援してもらう体制が整っていることはありがたい」といった声を聞くとプログラムを運営していて、とてもやりがいを感じる瞬間ですね。
Q.今後の松本様の展望について教えてください
これまで関与してきた人が山口から全国に事業を展開することができる体制を整える。これが一番の目標です。そのような山口での取り組みを見た方が、「山口県からでも全国に通用するスタートアップを生み出すことができるんだ!」と感じ、新たにスタートアップを目指す方が自然発生的に現れるような仕組みの構築を目指しています。そのためには、山口県全域でコミュニティ活動を可能にし、プログラム卒業後の先輩経営者が後進のスタートアップを育成する体制が理想ですね。そういった体制を拡充することが本当のエコシステムの完成に繋がると考えています。
Q.どういったコミュニティがスタートアップエコシステムの確立のために必要になると考えていますか?
事業ステージごとのコミュニティができてそれぞれの場所で、自分の今の悩みを共有することができる環境を整えることですね。こういったコミュニティを作るためにはやはり持続的なプログラムの開催体制を整えるが必要になります。ただ単に人が集まるだけのコミュニティではなく、参加される方々が目的を持って、みんなで有意義な場にすることが目標です。
そのためには、参加される方の声を真摯に受け止め、経営者の目線に立ったプログラムの体制づくりが必要になります。大都市圏には真似することができない地方ならでは強みは必ずあるので、そこを活かしたプログラム運営の基盤をこれからも創っていきます。
昨今、地方では少子高齢化、後継者問題、労働力不足など数多くの課題が浮き彫りになっていて、その問題を解決するための新規事業が長期的に必要となります。地方ならではのビジネスチャンスを活用し、経営者自身の原体験に基づいてユーザーを幸せにする、そのような事業がたくさん誕生することを切に願っています。
(このインタビューは2021年8月に実施させていただきました。)