経営者インタビュー:【株式会社バイタルリード 代表取締役】森山昌幸氏

Q.株式会社バイタルリード様の事業内容を教えてください

株式会社バイタルリードでは交通計画のコンサルタントと情報システム開発を融合したサービスを展開しております。現在は大学の研究室とタッグを組んでVRによる公共交通の社会受容性などを研究しており、2028年までには交通計画のコンサルタントと情報システム開発を融合したサービスの展開を予定しています。

Q.森山様の経歴を教えてください

大学時代は農業土木に関する勉強をしていました。大学卒業後は大手ゼネコン入社し、その後は地元の建設コンサルタントに転職をして技術士の資格を取得しました。その後、技術士の資格を頼りにして、島根県中から交通に関する相談が私のところに来るようになりました。

しかし、農業土木に関する専門知識には長けていたものの、交通に関しての知識はほとんど持ち合わせていなかったため自らの知識不足を痛感し、より体系的に勉強しなければいけないと思い、35歳の時に広島大学修士課程で2年間、研究に打ち込みました。

大学院での研究はとてもハードで、教授たちの求めるレベルもとても高かったことに最初は戸惑いを感じました。興味、関心のある分野だったのですが、正直ついていくのがとても辛かったです。

また修士課程を修了して数年後、今度は博士課程に進学しました。忙しい仕事の合間をぬって週に一回程度研究室に行き、必死に研究に打ち込みました。大変なことが多く辛かった数年間ですが、あの時の努力が今の自分、そして現在の事業のスケールにつながっていると考えています。

Q.株式会社バイタルリード様の最大の強みはどのような所にありますか?

弊社の一番の強みは、「地方の公共交通」の計画や運行支援をメインで行っていることです。確かに大手企業の中にも公共交通計画を行っている会社は多数あります。しかし、地方の現状を正確に把握し、そこに対して適切な施策を行っている点では他の会社には絶対に負けません。

例えば東京などの都会ではタクシーに乗ろうと思えば路上で手をあげさえすれば乗ることができます。一方、地方ではそういったタクシーの乗り方は不可能で、電話での配車、中心地のタクシー乗り場ぐらいでしか乗ることができず、都会のビジネスモデルは地方では決して通用しません。そのため、他の交通インフラを専門的に取り扱っている会社は発想がどうしても都会寄りになってしまっていて、地方でそのモデルを採用することは不可能に近いのです。

また弊社では教育に力を入れています。専門的な知識が必要となる分野で事業を行っているため社員一人ひとりの資格の取得、専門領域の勉強は欠かせないものとなっています。

中には働きながら博士課程を修了した社員もおり、文学部を卒業した女性社員が入社一年目に難関資格の技術士を取得しています。現在、島根県の会社の中では都市計画部門の技術士の数は弊社に最も多く在籍をしています。社内では懸命に勉強をする環境が整っており、社員全体で切磋琢磨することできる会社作りができています。勉強熱心な社員しか採用しないと言っても過言ではありませんね。嬉しいことに以前は私自身への取材依頼が多かったものの、現在では専門的な知識を持っている社員の方にメディアからの取材依頼が増えています。社員一人ひとりにスポットライトが当たっていて、目標としてきた社員一人ひとりを生かす経営が実現をしていると感じる瞬間です。

Q.3Eサービスを活用した中で、どのような成果がありましたか?

地方の会社でもエクイティファイナンスを使って経営をすることができるんだという発見が一番大きいですね。正直、3Eサービスを利用するまでエクイティファイナンスは私たちとは関係のない別の世界のことだと思っていました。しかし地方の企業であっても体系立てて事業を構築すれば、VCをはじめとする投資家からも十分に評価を受けることが可能だということを知りました。そして3Eサービスを活用する中で出資を受けることができるレベルまで事業計画を入念に作成し、なんとか目標に到達することができました。

Q.長年経営されてきた会社をベンチャー化する上でどのようなことに気をつけましたか?

会社を経営する中で日々様々な課題が生じます。新しい経営の仕方や、考え方をどのようにして社内で伝えるか試行錯誤をしながら日々取り組んでいます。働きやすい環境をできる限りで提供をしようと努力をするものの、やはりそういった環境を十分提供をすることができない場合もあります。そのような社内での認識のずれを無くすために、可能な限りコミュニケーションをとり、メンバーが働きやすい環境を作ることを念頭に置いています。自分で結論を出したことであっても、一度は会議に通して、社内全体で意思決定をすることを重要にしています。

私自身あまりコミュニケーションが得意ではないので、その分周りがサポートをしてくれていますね(笑)。TAKUZOの開発をはじめ、誰も成し遂げたことがないことに取り組んでいるので、予測不可能なことがまだまだたくさんあります。もちろん最先端の考えや技術を取り入れることも大切ですが、会社の中核となっている経営理念は揺れることなく日々の業務を行うことが何より重要です。社長の思いつきで経営を行うのではなく、社員全員で10年後までの経営計画を作成したりするなど、会社全体での意思決定を重視しています。そして会社全体で大切にする軸はぶらすことなく、経営計画に基づいて日々の意思決定を行うように心がけています。

Q.大型資金調達を行われましたが、どのような目的で今回の調達を行われたのですか?

今回の調達はTAKUZOの開発の加速と、人員の確保が主な目的です。2021年の秋頃からさらに展開地域を拡大して、汎用性を高めた上でのサービスの提供を考えています。現在では、中国地方を中心に展開をしていますが、公共交通の制度作りでは様々な手続きやその他の路線との兼ね合い、路線の組み替えなど様々な事象を考慮することが必要なので、長期的なスパンで事業を考えないといけません。

また実際に交通機関を利用している方の声も大切になるため、専門的な知識を持っているスタッフが現地に赴き、実地調査を行っています。さらにTAKUZOは広島大学、鳥取大学、島根大学の高等教育機関との連携を図り、AIの導入などより高度なTAKUZOの仕組み作りを行っています。

Q.島根県でのスタートアップエコシステムはどのくらい醸成されつつありますか?

徐々にスタートアップのエコシステムを牽引する方が増えてきているのはとても嬉しいことです。しかし半年間の経洗塾プログラムを終えて、とてもいいプロダクトが完成をしたにもかかわらず、その後、継続的にコミュニティに参加をしないのは大変もったいないことです。

コミュニティに参加をしている経営者はそれぞれ目標も異なっていて、業種も異なっているのですが、コミュニティに参加をすることで何かしらの発見や新しい気づきは必ずあると思います。何よりコミュニティに参加をすることで経営者としての覚悟ができてくると思うんですよね。

私自身、経洗塾及び3Eサービスを経て、スタートアップという世界があるのだと初めて知りました。これからは私が学んできたことをこれからプログラムに参加される方できる限り還元して行きます。また初めて参加される方は知らない用語、今までにない考え方ばかりで一歩踏み出すには勇気がいると思います。そういった方のハードルを低くすることも私の役割かなと。そのためにはコミュニティにも精力的に参加をし、自分の役割を少しでも果たしていきたいと考えています。

Q.今後の目標、会社としての展望を教えてください。

1回目の調達を受けて、今は次のラウンドでの調達を目指しています。創業して以来、弊社はずっと地域交通の最前線に関わってきました。そのため地域の公共交通に関するノウハウはどこにも負けないものを持っているという自負があります。現在ではいろいろな会社が私たちの業界にも参入をしてきています。5年後にはキャッシュの多くある大企業の方が、成長スピードが速くなり、私たちのような会社をあっという間に追い抜く可能性が十分にあります。そうなる前に、長年培ってきた我々の地方の公共交通という強みを生かした、独特のポジションを確立する必要があります。こういった発想もベンチャー経営に転換をしたおかげで、考えることができるようになりました。今では事業会社からも出資のお話をいただいており、地方発ベンチャーとして今後も全国から注目を集め続ける会社でないといけないと思っています。

また会社としての目標は社員一人ひとりが成長にできるような会社作りをしたいと考えています。単に仕事をするだけではなく、一人の人間として成長できる機会を提供することも社長としての役割です。そのため時代の変化、社会の変化が起きても取り残されるのではなく事業を発展させていくことだけを考え、日々取り組んでいます。

現にコロナ禍では大きな変化がありました。まずはオンライン会議が増え、今までは出張をして何時間もかけて現地に赴いていたのが、全てオンライン上で完結するようになり、生産性はかなり上がりました。またリモートワーク下でも社員一人ひとりのマネジメントに尽力しました。初めてのリモートワークの導入だったので、離れていても社員のモチベーションを下げることなく、仕事に取り組んでもらうために様々な試行錯誤をしましたね。オンライン化が進みメリットがあった反面、公共交通の利用者が減ってしまったのは事実です。この問題を解決するのが我々の使命であり、事業の成長を左右すると考えているのでこれからがとても楽しみです。会社としては資金調達もしつつ、IPOを目指していきます。また事業承継も考えないといけないので後継者の育成にも力を入れていきたいと思っています。

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